松竹衣裳株式会社の髙橋孝子様を講師にお招きして開催いたしました。髙橋先生は、平成10年に松竹衣裳株式会社に入社後、歌舞伎を中心にさまざまな舞台公演の衣裳担当として活躍しており、今回は、歌舞伎の衣裳の魅力について貴重なお話や着付けの実演を行っていただきました。
髙橋先生が所属している第一演劇課は、歌舞伎の衣裳を担当しており、主に劇場で役者の着付けや、衣裳の準備を行なっています。
今回の講座では、歌舞伎の衣裳が舞台に上がるまでの過程を紹介していただきました。
歌舞伎の演目、配役が決まると数ヶ月前に狂言方(きょうげんかた)という部署から附帳(つけちょう)が衣裳に回ってきます。附帳には何を用意するか覚書のように細かく書いてあります。
それぞれの配役によって準備する衣裳が違うので、附帳を確認し衣裳を用意しています。過去にどのような色や生地を使っていたかなども記載されているので、事前に俳優と打合せを行う際にも参考にしています。
見せ衣裳(みせいしょう)の際に、生地や模様をどのような色にするか色見本として色帳を使用します。
昔からの錆染(さびぞめ)や鉱物から出した色を基本として色帳を作っています。
同じ青でも異なった色がたくさんあるので、俳優と衣裳、染め屋とが確認をしながら衣裳の色を決めていきます。
平安時代中期の頃の貴族たちは、四季の色を衣に染めて身に纏い、自然の色を衣服に取り入れていました。こうした日本人独自の美意識が作り出した色の重なりの配色を襲色目といいます。襲色目(かさねいろめ)の名称は、四季折々の植物や自然界をそのまま表現してイメージした色を配色したものと、色そのものの名に濃淡を表わしたものとがあります。
成田航空ビジネス専門学校の学生2名にモデルとしてご協力いただき、藤娘と赤姫の衣裳の着付けの様子をご覧いただきました。
体の凹凸を無くすための作業です。いつもここまでは俳優が自身で行っているそうです。
長襦袢(ながじゅばん)の代わりとなる衣裳を着ていきます。こちらは上下に分かれていますが、汗をかいた際の着替えや衣裳の早替えがあるため、上下に分けています。
ここの襟の抜き方で、着付けの全てが決まってくるので最初が肝心です。
体型によって帯の寸法が変わってくるので、俳優と相談をしながら帯を巻いていきます。
藤娘の着付け、完成です。
左右で異なる柄をみせる袖の藤の柄は、ふくよかな体型で人気を博した六代目菊五郎が、藤娘の役をする際に自分の体型をいかに美しく見せるかを考え、元の柄より藤を大きく描き、色も当時流行ったお茶の嗜好を取り入れ、自分好みのお茶の色にしたそうです。この色の名前は、梅紅茶(ばいこうちゃ)と呼ばれています。
赤姫の着付け、完成です。
赤姫の衣裳は赤が基調となりますが、柄は演目の役によって決まっているものや俳優の好みによって変えています。
先ほどの藤娘の衣裳よりも、重量があり10kg近くあるそうです。
最後は、モデルのお二人に並んでいただき記念撮影を行いました。
参加者の声
・衣裳が決まるまでの流れがよく分かりました。
・衣裳の着付けの実演は実に興味深く、また、その美しさ、着付け技術の見事さに感動した。
・今度歌舞伎を観る際に衣裳を見る目が変わると確信できるものとなった。
みなさまにご満足いただけた講座となりました。髙橋先生ありがとうございました。